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未来のサステイナブルな航空機のために最適な工具

英国政府の発表した UK Innovation Strategy (英国のイノベーション戦略)によれば、「優れた設計は、人々と地球にとってますます重要な関心事になっている」とのことです。 これには、フライトをより持続可能性の高いものにし、世界中でのネットゼロ目標達成をサポートするための未来の航空機が求められている航空宇宙産業も含まれます。ここでは、サンドビック・コロマントの航空宇宙産業部門とテクニカルセンターの責任者であるスティーブ・ウェストン (Steve Weston) が、最適化された工具とプロセス知識が、増加している難削材の加工において、持続可能性と航空宇宙産業のイノベーションのために非常に重要であることの理由について説明しています。

未来のサステイナブルな航空機では、次世代の粉末ベース耐熱合金 (HRSA) と進化したセラミック基複合材 (CMC) への依存度がより大きなものになります、なぜならこれらは、より効率的な燃焼と排出ガス削減のために不可避な高温に耐えることができるからです。しかしながらこれらの被削材には、高温と変形に対する耐性、さらに極端な温度においても材料の良好な特性を維持することが求められます。このことが、加工における課題となります。

UK Innovation Strategy (英国のイノベーション戦略)レポートは、製造業およびこれらの難削材の大量加工においては、新しいテクノロジーとプロセスがカギとなる、と予測しています。業界内におけるコラボレーションも非常に重要で、これについては既に、英国のシェフィールドにある Advanced Manufacturing Research Centre (先進製造研究センター、AMRC) にその実例を見ることができます。


特にAirbus A321のような中型サイズの単通路型航空機の製造においては、新しいテクノロジーとプロセスが頻繁に使用されています。

サンドビック・コロマントは、Boeing社やMessier Dowty社 (現在ではSafran Landing Systems社) とともに、2000年の設立時よりAMRCに参加しているオリジナルメンバーの一社です。その後、British Aerospace社、Rolls-Royce社、GKN Aerospace社およびAirbus 社などが加わり、今日ではAMRCには合計約118社のメンバーが所属しています。このセンターのプロジェクトの多くは、すべてのメンバーにより選択され資金を提供され、共同で展開されるもので、AMRCは現在、世界中からの500名を超える優秀な研究者とエンジニアを雇用しています。すべての人が、強力でイノベーションに積極的な経済をサポートする数百万ポンドのプロジェクトに従事しています。

航空宇宙産業においては、持続可能性に関する新しいテクノロジーとプロセスは、サステイナブルな航空機燃料や液体水素といった新しいタイプの燃料の燃焼を可能にし、排出ガスを削減することに主眼が置かれることでしょう。高温燃焼が可能ということは、より効率的な燃料の燃焼が行われているということです。このことと高圧縮比を組み合わせれば、結果として効率は一層改善され、最新の、そして未来のエンジンをサポートすることができます。それは、より少ない燃料の燃焼で出力を高め、騒音を低減することを可能にします。

持続可能性のためのイノベーション

航空機エンジンにおいてはエンジンコアは比較的小さく、前部のファンは比較的大きなものになります。そのため制限要因は、どれだけ高速でファンを回転させることができるか、ということになります。その対策として、最近の5~10年の間に、ファンとエンジンコアとの間にギアボックスが導入されました。これによりファンはよりゆっくり、エンジンコアはより高速で作動し、高い圧縮比と良好な燃費を実現できます。

しかしながら、このようなワークを作製するには耐熱合金 (HRSA) 部品が必要になります。そのような被削材は、極端な高温にさらされてもその特性を維持するために、冶金技術を応用して作られています。しかしこのことは、それらの被削材の加工時に発生する応力が高いということも意味します。これらニッケル、鉄およびコバルトベース耐熱合金の独自な特性を融点近くで発揮させるため、一般にその被削性は低くなります。

航空宇宙産業における使用が増大している部品の一つがブリスクで、これは、ローターディスクとブレードの両方を構成するコンポーネントです。外周にブレードが挿入される溝がある従来のディスクとは異なり、ブリスクはディスクとブレード合わせて一つの部品にし、従来のブレード付きディスクより軽量になっています。これによりコンプレッサー内のコンポーネント数が減り、同時にドラッグが減り、エンジンの空気圧縮効率は約8%向上します。


ブリスクは一般に航空機エンジンのコールドコンプレッサー側に配置され、一般的にはチタンより作製され、燃焼室近くに配置される場合は耐熱合金 (HRSA) 製となります。これらの部品を効率的かつ最高の基準で加工するには、最適化された工具とこのような難削材に関する加工知識が必要になります。

そのためにサンドビック・コロマントの各社内プロジェクトは、航空機エンジン部品とその仕様にターゲットを絞って展開されています。これには、ディスク、ブリスク、シャフトおよびケーシングなどが含まれます。実際のところ今日のガスタービンエンジンにおけるブリスクの使用は増大していて、現在のエンジン構造からその潜在的な出力と燃料効率を余すことなく引き出すために、この傾向は続くものと思われます。

しかしながら耐熱合金 (HRSA) 製であることが多いため、ブリスクの加工は難しい課題です。これらのコンポーネントは寸法および形状に関する公差が厳しく、表面完全性と加工面品質に関する高い基準を維持する必要もあります。

より安定した加工

これらの加工の課題に対応するためにサンドビック・コロマントは、経済的で高品質の航空機エンジン部品の加工をサポートする数多くのツーリングソリューションを提供しています。. サンドビック・コロマントが推奨するそのような加工方法の一つが、高送り側面フライス加工です。この加工方法は、切削速度と送り速度を速くすることが可能になるワークとの径方向の食いつきを小さくすることと、熱、切りくず厚さおよび径方向の切削抵抗を低減する軸方向切込みを組み合わせたものです。

この加工方法をサポートするためにサンドビック・コロマントは、CoroMill® Plura HFS 高送り側面フライス加工製品レパートリーを開発しました。このレパートリーは、ユニークなブレーカと材種を揃えた多数のエンドミルを特長とし、2つのエンドミルファミリーを構成します。 その一つはチタン合金に、もう一つはニッケル合金に最適です。チタンの加工では切りくず排出と熱の発生が特有の課題となるため、一つ目のファミリーは、正常な切りくず排出条件のためのソリッドバージョン工具となっています。二つ目のファミリーは、切りくずを最適なものにし温度を制御するために、内部クーラントと新しい冷却ブースターを備えています。


サンドビック・コロマントのCoroMill® Pluraは、あるお客様の生産性を198%向上させ、ブリスクとその他のコンポーネントの加工に適用されています。


径12 mmのCoroMill® Plura HFSエンドミルと小さいサイズの競合工具を比較するお客様によるトライアルが行われました。このトライアルは、横型マシニングセンタにおいて、軸方向切込みを高め、径方向切込みを低くして、時効ワスパロイ420ニッケルベース合金製の低圧タービン (LPT) ケースを加工するものでした。その結果、CoroMill® Pluraでは切りくず排出量が大幅に増え、お客様に198%の生産性向上をもたらしました。このソリューションはブリスクとタービンディスクおよびケーシング、ブレードの加工にも適用され、削り残し (スカラップ) の低減も実現しています。

サンドビック・コロマントの製品ポートフォリオのその他のソリューションには、難削材製コンポーネントの高速仕上げ旋削用に設計された次世代の旋削材種があり、超硬と多結晶立方晶窒化ホウ素 (PCBN) の両方をお求めいただけます。これらの材種は、クラスの先頭に立つ性能を目指して設計された、次世代のセラミック荒旋削材種により補完されます。最新の仕上げ加工用材種は、航空宇宙産業向けエンジンの製造業者に求められる一貫した表面完全性を実現し、同時にコンポーネントを常に厳しい公差で加工するために、サンドビック・コロマントによるテストと最適化が行われているところです。

未来

UK Innovation Strategy (英国のイノベーション戦略)レポートが概要を報告している通り、AMRCのようなイノベーションのグローバルハブは、「一線を超えるような新製品を創造するあらゆる規模の会社は、グローバルな規模においても国内市場においても、より効率的になりより大きく成長しする」との見方が続くことでしょう。

未来のサステイナブルな航空機においは、ブリスクのような耐熱合金 (HRSA) コンポーネントはより広く使われることになるでしょう。実際のところ、AMRCにおいてサンドビック・コロマントと協働しているある主要な航空宇宙産業メーカーは、バイオ燃料で飛行して卓越した燃費を達成するように設計された、大型のウルトラファンエンジンを開発中です。その他の主要なイノベーションとして、よじれをなくしファンの回転速度を高めるように設計された柔軟な樹脂トランスファー成形によるブレードを挙げることができます。これらのテクノロジーは、Airbus A321などの中型の単通路航空機ではすでに広く使用されています。

その他の未来予測としては、水素燃料の中型飛行機の初飛行、小型の国内線用電動飛行機などが考えられます。現在航空機用に小型の電気モーターを提供する小さな設立されてから間もない会社がたくさんあり、CNBCのレポートによると、空を飛ぶ電気タクシーとして知られる航空自動車の市場は、2040年までには世界で1.5兆ドル規模に成長する、とされています。将来は、航空機に関するさらなる細分化が進行するでしょう。たとえば、乗客はヨーロッパ周りのローカルな距離では水素飛行機に搭乗し、米国などのより遠距離の飛行にはバイオ燃料飛行機が使われるようになるかも知れません。

コンポーネントのレベルでは、これらの用途は次世代の被削材により実現されるもので、サンドビック・コロマントの最適化されたツーリングソリューション、そしてその貴重なプロセスおよびアプリケーション知識は、すでにそのために頻繁に用いられています。サンドビック・コロマントとAMRCは、航空宇宙産業の主要なメーカーにも、そして人々と地球にとっても非常に重要なプロセス設計の最適化を確実なものにすることを支援していきます。

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